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1999年6月25日 建設通信新聞にて掲載

鉄鋼・建材8社が新研究会

鋼製砂防構造物

環境にやさしくコスト縮減にも

目的に応じ多彩なタイプ開発

川鉄建材/共生機構/神戸製鋼所/新日本製鐵/住友金属建材/住友金属工業/日鐡建材工業/日本鋼管ライトスチール

 頻発する土砂災害の根絶をめざして砂防工事の新技術・新工法が開発されているが、最近、全国で採用例が増えているのが「鋼製砂防構造物」。これまで主流だったコンクリート製構造物にはない利点を数多く持っている。現在、鉄鋼・建材メーカー八社が製造・販売している。今年4月には八社で砂防鋼構造物研究会が発足、鋼製砂防構造物の新技術の研究・開発、適用分野の拡大、そしてコスト縮減に向けた取り組みが活発化している。

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 鋼製砂防構造物の歴史は意外と古く、昭和40年代にはすでに製品化されていた。その後、さまざまな製品が開発されたが、構造や設計に関する統一的な基準がなかったことから、1982年に(財)砂防・地すべり技術センターが委員会を設置、鋼製砂防構造物の効果的な利用と普及に向けた本格的な取り組みが始まった。さらに前述のとおり、この4月には新たな研究会が発足、新技術の研究・開発と普及に向けた新たな一歩が踏み出された。
 では、鋼製砂防構造物の特徴とはなにか --------。
 まず、素材となる鋼材は強度が大きく靱性に富むため、設計の自由度が高く、屈曲した構造物や水・砂が透過する構造物をつくるのに適していることが上げられる。
 また、コスト縮減効果が大きいのも特徴。プレハブ化しやすいため、施工性がよく工期を短縮できるうえ、気象条件に左右されにくいため通年施工が可能だ。さらに運搬資機材が少ないため、運搬方法や運搬量が制限されるような現場での施工にも適している。
 さらに、鋼材はリサイクル率が高いうえ、河川内に設置してもほとんど無害。透過型の場合は、開口部が魚道の役割も果たすほか、河川の土砂運搬も妨げないため河岸や海岸の浸食対策にもなる。不透過型も、現地で発生した土砂を中詰材として再利用できるなど、自然環境にやさしいという特徴を持っている。
 こうした特徴を持つ鋼製砂防構造物には、大きく分けて2つのタイプがある。平常時の流出土砂も貯蓄する「クローズタイプ」と、平常時の流出土砂は透過し、洪水時には貯蓄する「オープンタイプ」だ。
 クローズタイプには、スクリーン構造、枠構造、ダブルウォール構造、セル構造などの類型がある。オープンタイプは、平常時の流出土砂を下流に流すことで洪水時に十分な貯砂ができるよう、構造物に隙間を設けたもので、土石流を水と土砂に分離させることが可能。隙間の取り方によって、スリット構造、格子形構造、セル構造などがある。
 すでに全国各地の砂防現場で利用されている鋼製砂防構造物。メーカー8社は、常に時代のニーズや年々解明されていく土砂災害のメカニズム即して新製品の研究・開発に取り組んでいる。今後とも環境や自然との調和、上流から下流まで一環した総合的土砂管理の重視など、新たな要請にこたえていくことが求められている。